三重県議会自民党会派

「幸福実感世界一にふれる会」

 

横巻き: ブータン王国視察調査報告書

 


  

 

 

 

 

 

平成29年4月17日()〜4月23日()

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次

 

参加者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

 

行程表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

 

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

 

. 国立ブータン研究所(Dr.Dorji Penjor,Dr.Tshoki Zangmo)訪問 ・・・・・・・・4

 

2.JICA(山田所長)訪問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

 

3.プナカ県表敬訪問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

 

4.GNHセンター訪問・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

 

5.GNH委員会事務次官訪問・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

 

6.外務大臣訪問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

 

7.パロ県知事MR DASHO DZONGDHA 表敬訪問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

 

8.YOEZERLING Montessori CHILDENS House 訪問 ・・・・・・・・・・・・・・20

 

 

 


 

参加者

三重県議会議員 津田健児、他8名

行程表

/

現地時間

地 名

行 程

4/17(月)

22:30

中部国際空港集合

中部国際空港JTBカウンター前集合

4/18(火)

00:30

04:30

06:50

10:00

12:30

14:00

中部国際空港発

バンコク着

バンコク発

パロ着

パロ発

ティンプー着

タイ国際航空にてバンコクへ

 

ドルック航空にてバグドグラ経由でパロへ

 

専用車にてブータンの首都ティンプーへ

・国立ブータン研究所

Dr.Dorji Penjor,Dr.Tshoki Zangmoを訪問

JICA(ブータン事務所)訪問

4/19(水)

07:00

13:00

16:00

20:00

ティンプー 

プナカ着

プナカ発

ティンプー着

ドチュラ峠(標高3.150m)を越えてプナカヘ

・プナカ県表敬訪問

専用車にてティンプーへ

 

4/20(木)

 

 

 

16:30

18:00

 

 

 

ティンプー

パロ着

GNHセンター訪問

GNH委員会事務次官訪問

・外務大臣訪問

専用車にてパロへ

4/21(金)

終日

パロ

・パロ県知事(MR DASHO DZONGDHA)表敬訪問

YOEZERLING Montessori CHILDEN`S House訪問

4/22(土)

11:30

17:05

パロ発

バンコク着

グハティー経由でバンコクへ

 

4/23(日)

00:05

07:00

バンコク発

中部国際空港

タイ国際航空にて名古屋へ

 

 

はじめに

機内アナウンスが「当機は着陸体制に入ります。」と告げられ、小さな窓から右

手も左手も山ばかり。山と山の間をぬう様に、小さな飛行機が飛び、山にぶつかり

はしないかとの不安感を持ちながらも、

いよいよ幸福の国「ブータン」に訪問ができる高揚感が高まり、飛行機は標高

2200メートルの首都「ティンプー」に無事着陸した。

ブータン王国は、ヒマラヤ山脈の東側に

位置し、人口は約70万人、国土の面積は

九州の約0,9倍程度の小さな国である。

国名の起源は様々あるが、サンスクリット語で

「高地」を意味する「ブーウッタン」説が

一般的である。

国のイメージは「GDP(国内総生産)よりGNH(国民総幸福)を重視する。」
 「物質的な豊かさより、精神的な豊かさを大事にする。」であります。

 

1972年の第4代国王が、新政策を宣言し、今までのGDPの成長を至上命題とするのではなく、

GNHを高める事を最大の目標とする。

なぜならば、経済至上主義では国民の幸福は達成されないとするものでありました。

当時、世界的には市場経済重視の流れの中で、まったく注目されませんでしたが、

2005年の国勢調査で物質的な豊かさより精神的な豊かさを重視する国の方針は

、国民の97%が「あなたは幸福ですか」との問いに「はい」と答え、最新の調査でも

「生活に満足しているか」との問いに83%が「はい」と答えている。

 

「ブータン国王夫妻」の画像検索結果

我が国においても、2011年11月に若い第5代

「ナムゲルワンチュク国王」夫婦が日本を訪問頂き、

国会議事堂での演説、又東日本大震災の被災地にも慰問され、

義援金100万ドル(8,000万円)が日本に贈られた。

多くの日本人がその姿勢に感激し、ブータン王国の素晴らしさが

日本国民に強く印象づけられました。





4月18日(火)

1.国立ブータン研究所(Dr.Dorji Penjor,Dr.Tshoki Zangmo)訪問

始めに「国立ブータン研究所」を訪問する。

国立ブータン研究所は、GNHの方針に基づき、各地域から出される要望とか、

施策を基本理念に基づき調査研究する機関である。

GNHについて少し調査報告をしますと、ブータン王国では、昔は経済指標の軸はGNP

(国民総生産)であったが、それに対抗する形で創出された。

その概念は「製品」ではなく、「幸福」と変え、それは物質ではなく精神に軸をとったと

換言できる。

つまりは、経済指標も大事であるが、ゴールではなく、幸福への通過点の一つという

考え方であり、最も大事な究極的目標は、「幸福」を明確にしている事である。

そして、国民総幸福は「より全体論の方向で国家の質を測定し、人間社会にとって有益な

発展は物質的、精神的な発展がお互いに補足して補強しあう時に生じる」と明記され、

憲法にも「国民総幸福の追求を促進するように努力しなければならない」と書かれている。

GNHの4本柱は「良き統治と民主化」「安定的で公平な社会経済の発展」「環境保護」
 「文化保護」の4つである。この4本の柱から更に具体的に掘り下げたのが9つの重点領域であり、以下に記す。

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1.心理的幸福

2.健康  

3.時間の使い方  

4.教育  

5.文化的多様性と弾力性  

6.良い統治  

7.コミュニティの活力  

8.生態学的多様性と弾力性  

9.生活水準

 

これらの9つの分野から、更に具体的に33の指標に細分化し、施策の推進に関する調査を行っている。

正に、現場の実態と政策が一致して、国民の幸福に正面から向き合っている感がする。


 

以下に概要説明後、主な質疑事項を記すと、

  ・GDP(国内総生産)よりGNH(国内総幸福)を重視する理論とか、精神的な豊かさの追求

について

  ・GNHの思想に基づく4本柱のより具体的な内容について

  ・GNHの教育政策の内容と、仏教(宗教)との関わりについて

  ・非同盟中立政策をとり、20数年前まではこの国は外部と情報を遮断する鎖国政策を

とっていたが、2008年国王の譲位後、立憲君主制に移行し、情報も外部からどんどん

入ってくるようになった。

  農業離れや、ホワイトカラー色を望む若者も多くなり、今後国の運営に影響が出る可能性も
  あると思うがどうか

 ・識字率が低いと聞くが、この格差が国民の幸福感にどの様な影響を与えるか等各議員から
                                          熱心に質疑応答があり、有意義な訪問となった。

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2.JICA(独立行政法人国際協力機構 ブータン事務所)訪問

   説明者:JICAブータン事務所 山田浩司所長

 

(歴史)

1958年、ブータン王国、3代目国王貴が京都に来られたご縁で、ブータン国王から許可をいただき、京都大学の植物学者である

中尾氏とその弟子の西岡氏は、ヒマラヤ探検隊としてインドの東側から陸路でブータン王国に入った。

植物学者の功績やとくに米作技術などの実績から、1964年5月、海外技術協力事業団(OTCA現在のJICA)を通じて、

故・西岡京治氏が専門家としてブータンに派遣された。

西岡京治専門家のブータンにおける農業技術の普及が、ブータン王国に高く評価され、以来50年以上の長きにわたり、

JICAとして継承され、日本の国際協力が実施されてきた。

 

(農業・農村開発・インフラ整備)

 西岡京治氏は、ブータン王国特有である山岳地域の狭隘な農地における米作や、ブロッコリー・アスパラガスの栽培・普及を

はじめ、農業機械の導入による農作業の効率化や生産性の向上を図った。

 ブータン国土の大部分が山岳地帯で、唯一の交通手段である道路交通を維持するため、当時は大きな課題であった老朽化した

「ベイリー橋」を無償資金協力により架け替えた。

また、国道沿いの斜面崩落対策など日本の技術が活かされてきた。

 さらに、世帯電化率100%を目指すブータンにおいて、地方送電の整備、地方配電システムの運用や保守管理能力の向上に寄与する

など地方配電の安全性と信頼性の構築を図った。

IMG_2864単に、農業栽培だけでなく橋を架けたり、地域開発をした功績が認められ、その後

「西岡京治氏」に対して、エンジの装束が許される「ダショー(最高の人)」という

称号が与えられた。1992年に没するまでブータンで仕事をつづけ、外国人では初めての

国葬で葬られ、現在も「ブータン農業の父」として敬われている。

その後も、引き続き農業開発が進められ、2000年ころ、4代目国王からブータンの

東側にも普及依頼を受け、2013年まで、園芸作物を開発指導し、野菜くだものの種類が

増え同時に道路網が整備された。

しかし、最近の若者は公務員志向が強くなっている。

また、都会に憧れ地域に根付かない課題もあり、一年半まえから、隣国インドからの輸入

依存から脱却し、総人口76万人の食糧確保のため、新しい「園芸農業振興プロジェクト」
 が進められている。具体的には、「農業公社」

なるものを設立し、さらなる機械化による生産性の効率向上を図り、請負による農業が展開
                    されるなど、魅力ある農業改革を進め、若者の地域定着を進めている。

また、食糧増産のための「灌漑システム整備」を進めている。水不足の時、農業においては地域どうしの共同という考えが重要となる。

JICAでは、「灌漑」技術による解決だけでなく、灌漑による工事手法が、いわゆるブータン的自然破壊とならない様、ブータン自国の

自立を促し、学びの場を提供している。

さらに、バランスのとれた地方開発のため、起業家及び支援機関の事業開発・マーケティングに関する実践的な能力強化により農村部に

おける中小企業の振興を図るための取り組みを強化している。

なお、ブータンではヒマラヤ山脈の水源を活用し、水力発電による電力を輸出している。これは、人口急増で電力需要の高いインドから

資金を借り入れ、ダムを建設し、その発電で得た収益で債務の返済をしている。

 

(気候変動対策・防災)

地球温暖化の影響で、ヒマラヤ山脈の山岳氷河の衰退とそれによる氷河湖決壊により、下流域で大規模な洪水が発生する危険性が高まる中、

氷河湖決壊洪水等の発生および被害程度を予測し、予測警報システムを徹底する能力を向上させることで、流域住民の人命、財産の保護に

努めてきている。

最近では、山岳の坂道に強い電気自動車にも取り組んでいる。

 

(JICAボランティア等)

ブータンでは、1988年から、青年海外協力隊(JOCV)、2001年からシニア海外ボランティア(SV)の派遣が開始され、現在までに、

延べ540名を超える人々がブータン全国の各地域で活動を行い、ブータンの社会や経済の発展に貢献されている。

現在の青年海外協力隊は43名で、学校保健体育の先生や民間企業を支援するボランティアで活躍され、ブータンの高官には大きな親近感を

持たれている。

また、当日はバングラディッシュからの国賓歓迎会があり、日本国の代表として、JICAブータン事務所長への臨席依頼があるなど大使館を

在駐していない日本の窓口としての役割や外交の役割も果たされている。

 

(考察)

ブータン王国における日本の先達「西岡京治氏」の功績の大きさに感銘し、改めて同じ日本人として誇りに思うとともに、そのことを我々

日本人の多くが知らされていないことに不快感を覚えた。

2015年のGNH(幸福度)調査では、ブータン全国20県で、幸福度にばらつきはあるが、開発が遅れているほど、農村地域ほど、女性ほど

より低いというデータである。

また、必要な道路整備など社会的開発(インフラ整備)による、病院や学校への交通が容易になったことが、幸福度を向上させる要因が

大きいことが判明している。

また、幸福度を高める要素に、「仕事があること」「家族と一緒にいることができること」「それぞれ地域で繋がりがあること」などがある

ことが分かった。

ブータン王国は、開発されていない自然が多くあり、国民は多様な情報から閉ざされ、王国の中にあっての平和や安心感による、ブータン

ならではの幸せがあり、我々日本人の幸せの尺度や物差しが違うのでないかとの見地から、比較することが可能と考えていた。

数年前の第5代ブータン国王が就任され、今までの国王にあった権限が大きく変化し、国民投票などの民主化など大胆な権限移譲が進んで、

新たなブータン王国に変わりつつあり、幸福度世界一の質の改善に目が離せない。

今回の調査で、三重県政が目指す「県民力でめざす『幸福実感日本一』の三重」の実現に向け、議会としての取り組みの参考としたい。

 

 

 


 


4月19日(水)

2.プナカ県表敬訪問

 4月19日午後2時よりプナカ県 リンジン ワンモ プランニングオフィサーから

プナカ県のGNH推進のための施策や課題等について説明をいただいた。リンジン ワンモさんは

ブータンの大学を卒業後、早稲田大学大学院を修了した日本でいう官僚エリートである。

プナカ県の予算は5年間で約1億円(人件費除く)

である。その少ない資源を有効活用するために

JICAの補助を得て住民参加型プロジェクト、

Project on Support for Community  

 Engagement in Local Government(SCLG)に

取り組んでいる。第五代国王になり王政から

議会制民主主義へ移行した。2002年には村の

村長を決める直接選挙、2008年には憲法が制定

され地方自治が構築してされていったが、地方行政の
 仕組みとしては予算、システムともに発展途上である。
 SCLGにおいて、まずプナカ県を含む3県を選定し

 パイロット事業を展開し、地方行政制度の構築と職員の能力向上に努めた。地方行政は道路、灌漑設備、水道などのインフラ建設を行っ

ているが、予算や人材の制約から村を中心としたコミュニテイに依存せざるを得ない状況である。また村民にはインフラの建設や維持管理の経験が

なく、故障や破損しても十分な対応ができなかった。そこで住民のリーダーを育成し、村民に技術を教えて簡易なインフラの建設、維持管理は村民

に委ねた。

そしてパイロット事業後はブータン全土に展開をしていく予定である。

 SCLGの説明をいただいた後の質疑応答では下記のような応答があった。

 

IMG_2930 GNHの33の指標のひとつである地域内関係の向上を図るためどのような事業を行っているかの

 質問には、もともと隣近所の家を建築するときに村人で助け合い家を建てるようなコミュニテイの

 連携の強さを紹介していただいたのに加え、村の行事に補助金を出している。

 

9つのドメインを学校教育の中でも教えているかの質問には、生活水準以外の項目はすべて

教えている。GNHについては学校も含め国民に広く広報している。教育には力を入れ、

約10分間のお経、先生からの話(ホームルームのような)、その後いい人になるための

瞑想(5分間)を各授業の前には必ず行う。(仏教に起因する行為だが、異なる宗教を

持つ児童生徒含め) 地方政治、予算に関する質問に対しては、県知事は、国からの派遣で

あるが、県を構成する村のトップ、村長は選挙である。プナカ県には11村が

 あり、その11村から議長のようなトップを選出し、村の課題を協議し、政策決定にも関与して
 いる。 国からの予算配分の仕組みは主に4つの基準があり、一つ目は人口、二つ目は面積、
                                             三つ目は、輸送距離であるが、それは首都からの距離ではなく、インド国境からの距離である。

 物資の供給がいかにインドから多いかを表している。四つ目はどれぐらいお金が足りないかである。(日本の基準財政収入額、需要額の考え方に近い)。

 医療制度の質問に対し、教育、医療(但し公立のみ)はすべて無料であるが、医師、病院が不足しているのでBasic Health Unitを各村に配置し保健師さんのような方、
 看護士などを派遣している。癌や脳の病気についてインドに送る。輸送費、治療費は政府が負担する。

 県独自の制度、それを作る権限については、川で車を洗うと罰金を課したり、週に一度地域の掃除をするルールなどがある。

 ただし基本的には中央集権の強い印象が残った。

 県の課題についての質問には、仕事が少なく若者の流出である。製造業が少ない。小さな工場も少ない。

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4月20日(木)

4.GNHセンター訪問

IMG_2956◎2017年4月20日 GHNセンター Dr.サムドゥ・チェトリ執行役員

 GNHセンターは2012年12月設立のNGOでGNHの思想を国民一人ひとりや外国に対して普及、

知らしめる役割を担っている。センターの運営は国のGNH委員会議長、文部大臣、ブータン研究所長など

の理事で構成される運営委員会が意思決定を行い、8名の事務局で運営している。収入源は視察への

対応手数料(一人15米ドル、約2000円)やGNHの仕組みを学ぶ研修の参加費用を主としている。

また、タイ、ベトナムにもセンター支所を設置するとともに欧米にも出かけてGNHの思想や地球温暖化対策の

必要性を説いて回っている。

 国立ブータン研究所とGNH委員会、GNHセンターの役割分担は次のとおり。

・国立ブータン研究所:GNHの調査主体。調査結果を分析し、課題を明らかにする

・GNH委員会:政策主体として国立ブータン研究所の分析結果を踏まえ5年間の政府実行計画を策定するととも
 に予算フレームを決定する

・GNHセンター:ブータンが進めるGNHの思想や理念を国民各層や海外に発信

 

 GNHの概念は、4代目国王が16歳に英国ケンブリッジ大学留学時に3代目国王がなくなったことを受けて国王を引き継ぐため帰国。
帰国後、「人の幸せが最も大切なもの」という考えのもと国内を訪問し、「幸せになるには」と国民各層に聞き取り調査を行い「幸せ」を希求する概念を

明確化させ、「GNPよりもGNH」と宣言したことに始まる。過剰生産、過剰消費、過剰廃棄という国際的な動きを阻止したいという思いも込められている。

 「幸せ」を測るため、重要な概念として4つの柱、9つの領域、33の指標を設定し、5年に一度、対面調査を行い進捗の把握をする仕組みを構築した。

ブータン国のGNHの考え方は国連が進めるSustainable Development(持続可能な成長)の概念とほぼ一致したものであり国際的なスタンダードになり

うるものであると自負している。

 さらに「幸せ」は与えられるものではなく、国民一人ひとりの行動にあるとの考えに基づき、2006年に4代目国王が民主化を宣言した。

 質疑応答のなかで「インターネット普及によって幸せの尺度、受け止め方が従来と変わってしまい幸福感が低下する恐れはないか」との質問に対して

「国王が国民に対して情報に惑わされるのではなく、情報を正確に把握できるような能力(ITリテラシー)を持つことが重要であることを

呼びかけている。学校教育においてもITリテラシーを高めることを重視している」との回答があった。

 このGNHセンターは非政府組織としてGNHの概念や理念を柔軟・機敏に国民各層へきめ細やかに浸透させる重要な役割を担っており、

国民の幸福感を高める基礎づくりをしているものと理解した。高尚な概念や仕組みを整備するだけではなく、それを根付かせる組織的な

取組が国民の幸福感を高めるうえで不可欠である。一方で国が価値観を押し付ける恐れもありその運用をチェックする仕組みが同時に

必要であろうと感じた。

 

<参考>ブータン王国GNH 4つの柱、9つの領域、33指標

4つの柱

1.「良き統治と民主化」2.「安定的で公平な社会経済の発展」3.「環境保護」4.「文化保護」

9つの領域

33指標

1. 心理的幸福

1.生活満足 2.前向きな気持ち 

3.後ろ向きな気持ち 4.精神性

2. 健康

5.精神疾患 6.健康状況自己報告(健診率) 

7.1か月のうち健康な日数 8.障害の状況

3. 時間の使い方

9.労働時間 10.睡眠時間

4. 教育

11.識字率 12.学力 

13.一般知識習得度 14.正しい価値観

5. 文化的多様性と弾力性

15.母国語の理解度 16.文化活動参加度 

17.芸術性 18.調和性

6. 良い統治

19.政府活動 20.基本的権利 

21.主要サービス提供度 22.政治参加

7. コミュニティの活力

23.時間とお金の寄付度合 24.地域内関係 

25.家族の関係 26.安全度

8. 生態学的多様性と弾力性

27.汚染とごみ 28.自然保護の姿勢  

29.荒廃による穀物ロス 30.都市性

9.生活水準

31.資産 32.持ち家比率 

33.収入状況

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5.GNH委員会事務次官訪問

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◎ 2017年4月20日 GNH委員会 シンレイ・ナムジェル事務次官

 

政府機関であるGNH委員会では、「幸せ」を測る9つの領域ごとの進捗の良し悪しを踏まえ各省から提案される政策を内閣の案とするかどうかを

判断する機能を持っている。判断にあたっては、GNH政策スクリーニング・ツールと呼ぶシステムを2010年から導入。この政策スクリーニング・

ツールでは、提案される政策について26の視点それぞれにGNHへの効果を1〜4の配点で評価。評価は10〜15名が各省のプレゼンを踏まえ評点を

合議のうえ決定する。その結果、66点以上で各視点3以上の政策は内閣へ送付、66点以上で各視点3未満がある政策は各省へ改善を促し、

65点以下は却下する仕組みとなっている。その事務局を担っているのがGNH委員会。委員会は6課72名の職員(補助職員を含む)で構成されている。

 政策スクリーニング・ツールによる評価は1年に5回ほど行い、内閣へ送付する政策については各省とともにGNH委員会が首相など主要閣僚へ

その内容や事前評価の結果を説明し、国会の議論に反映させることとなっている。

IMG_2976 この政策スクリーニング・ツール導入から各省は「幸せ」を測る9つの領域を強く意識して政策立案・実行する

ことになったとのことであった。この仕組みの運用にあたって国会議員等からの働きかけはないが、20県から

意見を具申することができる。

 

 ブータン国の年予算は日本円で780億円程度。このうち66.5%の約518億円の配分をGNH委員会が決定している。

ちなみに税収は所得税(0%〜30%の累進課税)、事業税、法人税、自動車税。人口76万人のうち所得税を納めて

いるのは10%程度で年約18億円。

 

<参考>ブータン王国GNH政策スクリーニング・ツール(Royal Government of BHUTAN Gross National Happiness Policy Screening Tool)の

26の視点と4段階の評価

カテゴリー

視点

生活水準

1.平等性 2.経済的安定性 3.物質的有益性 4.生産性

良い統治

5.政策決定機会 6.汚職の可能性 7.司法判断の効率性

8.司法判断の可能性 9.個人の権利 10.性的公平性 

11.情報公開度

教育

12.学習機会

健康

13.健康への影響

環境保全

14.水質汚染の可能性  15.大気汚染の可能性  

16.土壌汚染の可能性  17.植物多様性の保全度  

18.動物多様性の保全度

地域活力

19.社会的支援  20.家族の絆

時間消費とバランス

21.自然環境の享受度  22.リクリエーション度

文化

23.文化活動  24.ブータン人としての同調性と寛容性  

精神状態

25.精神的向上度  26.ストレス度

省庁からの政策提案を上記26視点ごとに「1 不適格」「2 好ましくない」「3 影響なし」「4 良い」で評点をつける。

合計66点以上かつ各視点3以上の政策は内閣へ送付、66点以上で各視点のうち3未満がある政策は各省へ改善を促し、65点以下は却下。

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6.外務大臣訪問

ブータン王国 外務大臣 DAMCHO DORJI(グルチョ ドリジェ)

 

IMG_3001まず外務大臣から挨拶をいただいた。

 「皆様の訪問を心から歓迎いたします。日本国とブータン王国との友好関係は1986年からはじまり

 30年が経過しました。最初はブータン国王と日本の天皇陛下の親交からはじまり現在の国王は

 5代目となります。

また本年6月1日に天皇家の眞子様がブータン王国を訪問される予定になっていて国王はじめ

国民は大変楽しみにしているところです。

 昔から日本の皆さんには大変助けていただきました。特にJICAの西岡氏には農業作物の

 品種改良から耕作や農機具の支援までお世話になりましたので国民は日本に感謝をしています。

 これからも強い絆が深まるよう期待したい」。

 

ブータン王国の課題は国内に仕事がないこと(金銭的に貧しい)隣国のインドに依存している事が

多いことなどあげられる。特に自然を大切にし国土の保全に努めている国であるので近年の地球温暖化の影響で災害が
  起こることを懸念している。

また教育にも力を入れ小学校からの英語教育はじめ日本と大学生の交流も60名に達しているとのことである。

ブータン王国の外交の課題については中国とインドに囲まれた小さな国であるため

過去には他国の侵略もあり、今は小規模ながら軍が国境の警備にあたっている。

王国であるため大変平和的な外交を行っているなか、インドが最大の経済協力支援国と

友好国であるのは間違いない。

 

 質疑応答では「今後観光ビザについて多くの外国人の入国を進めるのか、

それとも少なくしていくのか」との質問に対しては「High Value・Low Impact

(高い消費・低い負担)の考えのもと入国者数の増加のみを目的とするのではなく、

観光客単価の向上を目指す」との答えがあった。三重県の観光振興も付加価値の

高い観光の提供を推進しており共通するところがあり、今後も多くの観光客が訪れる

と自然破壊やゴミの問題なども観光地に対するダメージや経費も考えていく必要がある

と参考になった。

 

結びに、ブータンの人々はこころ豊かである。それは幼少期からの家庭での躾や学校での道徳教育などで
                                                     育まれていると感じた。

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4月21日(金)

7.パロ県知事MR DASHO DZONGDHA表敬訪問

IMG_2799パロ県は、唯一の国際空港がある、国際的な玄関口にあたる県である。

首都ティンプーに近く、なんとか土地を確保できるために立地場所として選ばれた。

標高は約2200メートル。翼が山々をかすめ、縫うように着陸する様は我々を驚かせた。

パロ空港に着陸する機のパイロットは、ブータン出身者が担当するという話も聞いた。

人口は約4万3千人。

 

パロ県庁を訪問し、テンジン・テンレイ知事にお会いし、お話を伺うことができた。

IMG_3027ブータンに20ある県のなかで、

パロは日本人がはじめて助けた県である。

ダショー(最高の人、という称号)・ニシオカ氏が

農業機械を導入し、ここで大根を作ることから始めた。

自動車のための道も作ってくれるなど、他県より

良くなるまでになったのは、日本、ニシオカ氏、

JICAのおかげである、と語られた。

パロ県ではGNHで地域内の協力関係向上を進めている。例えば、村に家を建てる人がいれば、人々が集まってきて壁や窓を作って助け合う。

こういう文化は昔からあるが、このことをしっかり根付かせて、良い村になるようにしようとしている。

(例えば国が作った道路を、それは国の仕事だから、という感覚でいるのではなく、自分たちの道路だ、だから自分たちで維持管理しようという気運に

なるようにしようとしている。

 

IMG_2826学校と病院は重視している。

病院のほかに薬草・漢方による治療もある。

ブータンには国土の60%は必ず森林として保たなければならないという規定が憲法にある。

現在は72%が森林。自然を壊さないということが、まずは一番。

次に大事なのは「水」。

水がないと農業ができなくなる。水のない間、仕事がなくなる。すると首都への人口流出を助長してしまう。

山の上の水源、泉をみつけて、野生動物が入らないよう、濁らないようにフェンスをして守っている。

若い人に仕事がないので、起業のための融資の金利を15%から4%に担保なしで下げた。

人口流出対策として、お米のとれない標高の高いところでは、冬虫夏草を振興するなど、村に合わせたリサーチを

して進めている。たとえば冬虫夏草を進めることで現金収入を確保でき、村を守って住み続けることができる

ようになる。冬虫夏草は、村の中で免許制にしている。誰でもどこでも採れる、では守れない。

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  文化を守ることは重要だ。

険しい山の上にあるお寺で、自動車の通れる道がない

ところがある。それは、あえて作っていない。

歩いてお寺まで行くことが罪を洗うから。

 

33の指標のなかの、14番の「正しい価値観」。

学生たちに自国の文化の価値を守ることを教える。守るとどうなるのか、守らないとどうなるのか、を。大国に挟まれたブータンにおいては、守らないと独立が危うい。

1週間に2回くらい学校で教えている。民族衣装の着付けなども。

若い人がダメにならないよう、子どもの頃から教えるのが大切。長幼の序や親子の関係など。あいさつ、礼儀、しきたりを守ることは重要。

 

IMG_3031我々三重県議会議員からの質問に対するお答えが大変印象深かったので、ご紹介したい。

「パロ県のGNHは全国4位となっている。これから1位にしていくためにどのような

お考えをお持ちですか?」

順位を争うのは仏教の教えから良くない。村々の仕事をがんばるのみ。5年に1回プランを作る。

県の1年の仕事が、そのプランに対して100%から90%の達成率であればエクセレント。

90%以上にしていきたい。それが良い県になるということである。

 

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8.私立YOEZERLING Montessori CHILDEN’S House訪問

(ブータンの教育状況について)

 ブータン王国で幸福度が高い要因のひとつとして、大学までの学費を含み教育費が

無料であることや医療費が無料であることが多いに関係があると思われる。

 幸福度の関係で各機関へ訪問すれば必ず教育関係の話が出、自慢げに話をしてくる。

それほど子供たちへの将来を考え期待している証であると感じた。

 

 教育制度は7年、4年。

2年そして大学3年間となっており日本で

言う小学校の前に予備教育クラスがある

(7年に含まれる)。

 基本的には7年間の初等教育と6年間の

中等教育から構成されている。

 入学は6才からできるが、いろいろな

状況で入学年齢はあるとのことであった。

 各学年で卒業試験があり、

落第すると留年することになり、優秀な生徒は試験
で飛級できる制度となっている。(国王も落第したとの
 話があった?) 小学校、中学校、高校までの学校では伝統的民族衣装の制服が決まっており、男はゴ女子はキラと言い、大学生はゴ、キラの色は自由であるとのことであった。

 大学は国内は国立の1校しかなく、学生は試験により選ばれるが全国で500人(全人口76万人)であり、行けない者は隣国のインド、

 バングラデッシュの大学へ私費留学するとのことであった。(ガイドの方もインドへ留学していたとのことであった。)

 私立学校は1987年に初めて開設され、2013年には普通教育課程に通う私立学校生徒は約12.000人いるとのことであり、

 現在も増加しているとのことである。

 教育は英語で行い、国語について自国語ゾンガ語をしようしているとのことであり、子供たちも流暢な英語をはなしていた。

 ただ英語によりブータンの文化が変化したりしないように教育には最新の注意を持って行い、国も力を注いでいる。

 文化は経済や国民感情の変化等により衰退を生じることもあるが、国として建築物の制限、環境保全に力を入れ、教育にその考えを示し子供たち

 にこの国の未来を託すと言う信念が感じられた。

IMG_3149 このことは日本が明治、敗戦後の日本の子供たちへの教育を最も大切にし、力を入れたことを思い出させた。

 ブータンは平地が少なくほとんどが段々畑状況であり、崖に家が点在しているような状況であり、

何として学校へ通っているのか気になった。

 聞くところによると学校へは各人個人が責任を持って行くとのことであり、

私立学校ではスクールバスがあるところもあるが基本的には歩いて通学するとのことである。

 しかし幹線道路には乗合バス等が走り、随時乗車できるとのことであるが、バスから降りてからは

家までは歩いて帰らなければならない、2時間近くかけて通学する生徒も多くいるとのことであり、

あの崖を谷を登り、降るのかと思うと感心せざるしかなかった。

 

私立YOEZERLING MONTESSORI CHILDREN`S HOUSUを訪問した。

IMG_3113 ジンデイ校長(DENDI:CENTRE HEAD)やゴやキラを着た
  子供たちから歓迎を受けた。

子供隊は民族衣装でなければ日本の小学校の感じであり、
  人懐こい感じで接触していた。

教室では自習のクラスと数学の勉強をしているクラスを見学した。
  言葉は英語であり、

自分で考える教育であった

 質問をすると、はにかんだ笑顔で答えてきたのに感心した。

別室に移りDENDI校長より学校の説明及びブータン教育の状況を
  お聞きした。




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  学校では事業前に全員で瞑想を5分、お経を15分、スピーチを5〜10分行う、これらは宗教(仏教)から来ている。

ブータンではブータン仏教以外にもヒンズー教やキリスト教徒も存在するので祈ることが大切であり、宗教のためではなく自分自身のために瞑想する。

公立では瞑想を30分行うところもある生徒数は小、中で250名、高校生は300名で内100名が寮で生活をしている。

教育で文化を守る(生活全般を教える。)私と言う言葉はダメで、必ず私たちという考えで物事を考えるように指導している。

先生は小学校で12名で別に4名の16名で運営している。

夏休みを2週間から1カ月に、冬休みを1カ月から2週間に変更した(国からの指導?)

幸福(ハッピー)についてストレートではなく、ゆっくり教えるようにしている。

等の説明があり、その後質問、意見交換等を行った。

問 進級試験はどうしているのか

答 1年から2年への試験は政府が行う。

問 公立との違いは?

答 公立には多数の生徒がいる。1クラス25名で公立は40名であり、先生がしっかり教育することができる。

問 落第者はいるのか?

答 小、中ではないが高校では1年に1名程度。

問 いじめはあるのか?

答 初等科ないが、高校生ではケンカが時々あるがいじめは無い。

問 弁当等はどうしているのか?

答 生徒が持ってくる。ジュース類、スナック菓子は禁止。

問 引きこもりはないのか?

答 幼稚園?ではぐずりはあるが、引きこもりは聞かない。

問 地域との関係、PTAはあるのか?

答 先生と父兄の会合を年3回行っている、地域との関係は返事がなかった、

問 学校への送り迎えはどうしているのか?

答 基本的には生徒個人の責任であるので、父兄等が送り迎えを行っている。

問 授業料はどのくらいか?

答 1か月2000ニュータム×12月 24000(約46000円)

問 私立の教育機関はどれぐらいあるのか?

答 パロ県で初等科3校、高校で4校、幼稚園は公立がないが把握していない。

 

所感

 ブータンの教育制度を日本と比較するには難しいかも知れない。

 教育については国が自国の文化、習慣を守るために強い権限を持って行っており、その存在感は明確である。

 しかし国民の側には柔軟性をもって対応していることが感じられた。

 1987年に初めて私立教育機関が出来てから、公立では対応できない環境が生じてきているのであるが、

自然環境の変化や経済社会の変化がこの国の教育を将来どのように進めていくのか参考になった。

 都市部と農村部の環境変化が生じてきており、若者が都市部に集まるようになってきており、国、県の行政は地域に

経済性を造るようにしているが変化は止められていない状況のように感じられた。

 このため、国として教育に力を入れ、人間として幸せを持てる人格を育てようとしている。

 ブータンは自国だけでは自給できないし、道路建築、食糧、原材料及び労働力を含め多くをインド等からの援助が

なければ自立できないのが現状である。

 また民間企業が発展していない(マーケットが小さい)、上から言われれば絶対服従という考えがあり経済的発展は

難しいと思われる。

 このためにも教育で人々の考え、方向性をまとめるとともに文化を守り、文化等国の自然を観光として出して行く

ことを選んでいる。

 しかし俗化された観光でなく、独自の自然を守りクオリティを上げた政策を推し進めている。

 そのためにも人材を育てるとともに、総ての国民が英語で話しブータンという国を育てていこうとしていると感じた。

 私ども日本も教育に信念を持って、この国の未来と子供たちの将来を真剣に考えるべきと確信した。

 先にブータンでは教育に柔軟性を持っているとしたが、障がい者教育については残念ながら聞くことが出来なかった、

しかしリンデン校長から個人的な話として、近所に身体障がい者の子供がおり、学校へ行っていなかったが校長が個人的に

自分の学校へ通わせ今でも在籍しているとの話を聞き、障がい者の置かれている状況を思わずにはいられなかった。

学校訪問後、父兄が子供たちの迎えに来ていたが私立学校の授業料を考えればそこに貧富の差が生じているのではと思った。

校長は親たちの職業は農業者が半分で他は公務員、商売人等であると答えていたがブータンの教育状況も変化が生じるのか

見守りたいと感じつつ、日本の教育も考えていかねばと強く思った。

ある国の教育者から聞きた話を思い出した。

経済が発展して個人の生活が豊かになると公共性よりも個人主義が強くなり国の文化伝統が衰退し社会がぎこちなくなってくる、

そこから社会生活がおかしくなり住みにくい国になる。

ブータンはそれに挑戦していくのであろうか。

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